2010年5月21日金曜日

ブラック・スワン ナシーム・ニコラス・タレブ

p36 不透明の三つ子
a わかったという幻想。世界は実感するよりずっと複雑(あるいはランダム)なのに、みんな何が起こっているか自分にはわかっていると思い込んでいる。
b 振り返ったときの歪み。私たちは、バックミラーを見るみたいにして、後づけでものごとを解釈する(歴史は、人が経験する現実よりも、歴史の本で読んだ方がわかりやすい)。 
c 実際に起こったことに関する情報を過大評価する。権威と学識ある人は不自由になる。とくにものごとの分類をはじめたりすると、つまり「プラトン化」すると、それに縛られてしまう。

p227 NNT(つまり私):公平なコインがあると思ってくれ。つまり投げたときに表が出る確率も裏が出る確率も同じだ。さて、九九回投げたら全部表だった。次に投げたら裏が出る確率はどれだけだろう?
ドクター・ジョン:くだらない質問だな。もちろん半分出。オッズは五〇%で、一回一回結果は互いに独立だって仮定したよね。
NNT:トニー、君はどう思う?
デブのトニー:もちろん一%もないよ。
NNT:どうして? 公平なコインだって言ったでしょ。つまり確率は、毎回五〇%ってことだよ。
デブのトニー:てめぇいい加減なこと言うな。さもなきゃ「ごじゅっぱあせんと」商売に金出すようなカモだろ。コインは細工がしてあんだよ。公平なんてありえねぇっちゅーんだ。(翻訳:九九回投げて九九回表が出たコインが公平だというあなたの仮定は、間違っている可能性が高いです。)
NNT:でもドクター・ジョンは五〇%だって言ってるよ。
デブのトニー:(私の耳にささやく)銀行にいたころ、こういうオタクがわんさかいたよ。こいつらトロすぎる。ちょろいぜ。簡単にだませるぞ。

下巻
p7 コペルニクスが惑星の運動に関する発見をしたとき、それがどれだけ重要な発見か、彼にとっても当時の人たちにとっても明らかだったに違いないと私たちは思う。でも、権威ある人たちが彼の発見に腹を立て始めるのは、彼がなくなってから七五年もたってからのことだった。同じように私たちは、ガリレオは科学の殉教者だと思っている。実際は、協会は彼に真面目に取り合わなかったのだ。むしろ、大騒ぎしたのはガリレオのほうで、それが誰かの毛を逆なでしたようだ。ダーウィンとウォレスが、リンネ協会で自然選択による進化の論文を発表した年の終わり、当のリネン協会の会長は、「衝撃を受けるような発見はなかった」と述べている。私たちが世界を見る目はこの論文で大きく変わることになるというのに、科学に革命を起こすような発見は一年間なかったと宣言したのだ。
 私たちは、自分が予測する段になると、ものごとは予測できないということをすっかり忘れてしまう。
p19 ポワン彼も唯一にして無二の人だ。父がポワンカレのエッセイを勧めてくれたのを覚えている。科学的な内容がいいだけでなく、フランス語の散文で書かれた筆致がいいのである。巨匠はその随筆を続きものの記事として書いた。まるで即興の演説みたいだった。傑作とはそうしたものだが、繰り返しはあるわ脱線はあるわ、凝り固まった頭の「ボクもワタシも」タイプの編集者なら卒倒しそうな要素が全部混ざり合っている。でも、考え方ががっちり固まっているから、むしろそのおかげで読みやすくなっている。
p72 映画以外で良い方の黒い白鳥の事業というと、出版の一部、科学的研究、そてにベンチャー・キャピタルだ。こういう業界では、損失は小さいが利益は大きい。本を一冊出して失うものは小さい。一方、まったく思いもしない理由で飛ぶように売れる本があったりする。それがどの本でもおかしくない。裏目に出ても失うものは小さいし、調整するのも簡単だ。もちろん出版社の問題は、よくお金をかけすぎてしまうことだ。よい方が出ても利益は限られ、一方悪い方が出ると損は莫大になってしまう(本一冊に一000万ドルをつぎ込めば、黒い白鳥はその本が大ベストセラーにならないことのほうである)。同じように、テクノロジーは大きな報いをもたらすけれど、ドットコム・バブルのときみたいに、インチキな話につられて大きく賭けると、どんなにいいことが起こっても儲けは限られてしまい、損は莫大になる。黒い白鳥でいい思いをしたのは、不確かな会社に投資して、その後凡庸な投資家に持分を売り払ったベンチャー・キャピタルの連中だ。「ぼくもワタシも」の後追い投資家たちではないのである。。。。。。(中略)。。。。。こぅいう状況には「バーベル戦略」がぴったりと合う。つまり、よい方の黒い白鳥にめいっぱい自分をさらし、同時に、悪い方の黒い白鳥には被害妄想みたいな態度をとるのだ。よい方の黒い白鳥にさらされている部分では、不確実性の構造をちゃんとわかっていなくていい。損がとても限られているなら、あらん限りの力を尽くして積極的に投機的に、なんなら「理不尽に」ならないといけないのだが、どうもそれがうまくわかってもらえない。
p74 つまり、予測ではなく、備えの方に資源を費やすのだ。
 すべてを警戒し続けるのはまったく不可能だということをよく覚えておこう。
 c チャンスや、チャンスみたいに見えるものには片っ端から手を出す。チャンスなんていうものはめったに来ない。思っているより稀なのだ。よい方の黒い白鳥は避けて通れない第一歩なのだ。だから黒い白鳥に自分をさらしておかないといけない。
 人生で運のいいことがあっても、それに気づかない人があまりにも多い。大手の出版社(でも、大物の画商でも、映画のプロデューサでも、やり手の銀行員でも、大風呂敷を広げる人でも)から仕事が舞い込みそうなら、予定なんか全部放り出せ。もう二度と扉は開かないかもしれないのだ。チャンスはその辺の木に生えてくるもんじゃないのが、みんなほとんどわかってないので、私はときどきショックを受ける。
 タダで宝くじじゃないもの(賞金は決まっていないから)をありったけ集め、賞金が出始めたら、捨てたりせずに、そういうチャンスに対するエクスポージャーを最大化する。そういうことをするなら、大きな街で暮らしていることが大きな価値を持つ。運のいい出会いができるオッズが高くなるからだ。セレンディピティのまわりでウロウロしてエクスポージャーを高めることができるのである。そういう形での出会いで得られるいい不確実性は、「インターネットに時代なんだから」田舎に住んでいても十分に人とやりとりできる、なんてトンネル化した考え方では見過ごされてしまっている。
p154 私もこの本で彼のそういう作戦を真似している。「私は先駆者を発明しないといけなかったんだよ。そうしないと、誰も私の話をまじめに聞いてはくれなかったからね」。彼は一度、私にそういったことがある。だから彼は、大物の言うことなら信じる世間の風潮を利用し、大物を説得の道具として使ったのだ。どんな考えだって、探せばほとんど常に先駆者が見つかるものだ。だから自分の主張のどこか一部分と研究分野が重なっている人を見つけて、その人の研究成果を自分の主張の裏付けにつかうぐらいはほとんどいつでもできる。
p217 「電車なんかで走るなよ」
 。。。。。(中略)。。。。。電車を逃して残念なのは捕まえようと急いだときだけだ!同じように、他の人があなたに期待する成功に追いつこうとするのがつらいのは、まさしく、そんなことをしようとするからである。
p218 私は、ごはんがまずかったとかコーヒーが冷たかったとか、デートを断られたとか受付が感じ悪かったとかで、一日中惨めだったり怒っていたりする人に出くわしてびっくりすることがある。。。。。(中略)。。。。。。贈り物にお城をもらっておいて、風呂場のカビを気にするような恩知らずになってはいけない。


















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